大きな邸宅で、優しい「父」に何不自由なく大切に育てられているウサギたち。
彼らの一番の望みは「お父様に食べてもらうこと」。
この異質な価値観の世界で、一匹だけそのことに疑問を持ったウサギ、テディがたどる運命は・・・!
美麗で可憐で異様なダークファンタジー『円環のラパン』の初単行本が1月15日より発売中です!
テディは幼い頃に親に捨てられ、孤児院で生まれ育ったウサギ。
他の孤児たちは茶色系のウサギですが、テディは白い耳、青白い肌、赤い目という皆と違った容姿をしていたため、ずっといじめられていました。
ある日、テディの「父」が彼を迎えにきます。
昔ある事情があってテディを手放さざるを得なかったのだと説明する父。
今後は父の所有する豪邸で、他の兄弟たちと一緒に暮らそうと提案します。
常にいじめられていた孤児院の暮らしとは打って変わって、父の豪邸で穏やかで満たされた生活を開始するテディ。しかし、自分と似た姿をしたやたらと大勢の「兄弟」がいること、兄弟たちが食事のたびに不審な挙動をする点に、テディは違和感を覚えていました。
そして、兄弟で一番仲良くなった「アデル」の発言を聞いて、違和感は決定的になります――彼は「お父様に食べてもらうこと」が夢なのだと!
この異様な価値観に納得できないテディがとった行動は――
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たぶん本作のあらすじを読んで真っ先に思い浮かぶのは、藤子・F・不二雄氏の名作短編『ミノタウロスの皿』。
登場するウサギたちが「食べられる」ことに疑問を抱いていないどころか、名誉なことだとすら考えている点は同様ですが、『円環のラパン』ではこのテーマを軸に、さらにもう一段階踏み込んだ内容を描いていてかなり面白いです。
最終的に食べられている?死んでしまっている?かもしれないテディとアデルの人生(兎生?)を何度も仕切り直しながら、その繰り返しの中で、徐々にこの歪んだ世界から逃れる術を模索していく物語構成は見所です。
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ウサギ耳キャラクターは恋愛性的な意味合いで「食べられる」というネタにされることもありますが、食欲的な文字通りの意味で「食べられる」対象になってしまうこともしばしばあります。
例えば、東屋めめ『擬似親子四コマ』はまさにそういった「食べる狼と食べられるウサギ」の関係を描いた作品でした。
現代の主要な五大ケモミミ――猫・犬・狐・狼・ウサギのうち、ウサギだけが食べられる側の草食動物(他は肉食動物寄り)という事情があり、ウサギ耳は他のケモミミとは違う特殊な役を演じることがあります。
本作『円環のラパン』では、食べられる側のラパンたちがウサギ人間の姿をしていることで、彼らが「食べられてしまう」運命(変えがたい)をより強調している印象です。
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