関東の外れの山深い函森町に住む中学三年生の知里(ちり)はある特殊な障害・・・あるいは呪いのようなものを持っています。
それは、町のシンボルでもある神木から2km以上離れることができないという障害。
長年、仕方のないこととして遠出はできないものとあきらめていましたが、情報化時代の現代、彼女はインターネットを通じて、この障害を解消することができるという女性・・・六尺先生に出会います。
先生の助言に従って知里は治療活動を開始したのですが・・・それはバニーガール姿(その他色々な動物娘仮装)でバケモノと追いかけっこをする、奇妙な日々の始まりとなったのでした!本格伝奇ファンタジー+バニーガールの全く新しい組み合わせ!
『つらねこ』単行本最新2巻目が11月20日より発売中です!
知里が神木から離れられないのは、現世と対を成す裏世界「ネ」と強く繋がっているため。
「ネ」に繋がっている人間は一種の鎮守の役目を担っており、街に平和と幸運をもたらす重要な役を負っているのですが、六尺先生はこの「ネ」の裏道に当たる「ネドコ」を通る方法を知里に教えてくれます。
しかし、「ネドコ」にはそこを住処にする「ネ住み」もとい「ネズミ」がおり、知里はそのネズミに人間だとばれないように動物の格好(主としてバニーガール!)をして、ネドコの裏道の開拓を行うことになるのです。
・・・実際のところ、六尺先生は知里を一種の実験台や突破役として扱っているフシはありますが、知里としても神木から徐々に離れた場所に行けるようになるので、悪い話ではありません。
今回も、水族館、商店街、遊園地などなど、これまで行けなかった場所への「ネドコ」の道を開拓していく知里ですが・・・!
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不思議で奇妙な世界と、ちょっとノスタルジックな風景、本格的な伝奇描写、そして多大なバニーガール!へのこだわりが魅力の作品です。
本作のバニーガール姿は人間であることを隠すための一種の擬態であり、付け耳の系譜としては『ねこだま』(人間であることを誤魔化すために付け耳をつける)の系統にあるといえそうです。
本作のような「敵対者にばれないようにする擬態のための付け耳描写」の例としては『頽廃の花売り』といった例があります。
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本作、付け耳に関する面白い表現が多数あるのですが、その中でも今回注目した描写。
第11話にて、群馬県の某遊園地の裏世界である「ネドコ」での活動をする知里。
ここでは彼女はネズミ耳を付けたネズミメイド姿になります。
『つらねこ』2巻P150(熊倉隆敏/KADOKAWA)
遊園地でネズミ耳姿だと「例のテーマパーク」に関する連想がすぐ働きます。
作中内の遊園地は「例のテーマパーク」には全く似ていないのですが、知里がネズミ耳姿であることで、「例のテーマパーク」に関するおぼろげな印象が読者の中にそっと挿し込まれる、という面白い効果を生み出しています。
こういう連想をわざと誘発するのにネズミ耳を使っている、興味深い表現として要メモです。