空に浮かぶ島「浮塊」のひとつである榮凛島。
平和な隠れ里であったその島は、世の乱れを反映して、異形のモノ「寇魔」に蹂躙される地獄のような場所になってしまいました。

そんな島で生きる、狐の耳と尻尾を持った異形の少女・かがり。
その見た目ゆえに島を襲った災いの元凶とののしられ、人々からいわれのない差別を受けていましたが・・・彼女の祈りが、世に平安をもたらすと呼ばれる伝説の仙人「彭寿星(ほうじゅせい)」を甦らせるのでした!

第26回電撃小説大賞・銀賞受賞の、異色の古代東洋風ファンタジー『少女願うに、この世界は壊すべき ~桃源郷崩落~』が4月10日より発売中です!
熾天寺かがりは、榮凛島・桜泉里の巫女の家系に生まれながら、狐の耳と尻尾を持っていたせいで「寇魔(こうま)もどき」と忌み嫌われ、独り生きている少女。

今、榮凛島は寇魔の一種族「天颶(てんぐ)」とよばれる悪逆な魔物に蹂躙されており、人々の生活は悲惨を極めています。
そんな人々の不満のはけ口とでも言うように、かがりに対する差別も日に日に強まっている状況。

そんな中でも、気の強いかがりは母の言いつけに従って、世が乱れると甦ると言い伝えられている仙人「彭寿星(ほうじゅせい)」を祀り、さらには自身で乱れた世界を変えようと、剣術の訓練を怠らずにいました。

ある夕暮れ、暴徒化した住民に家を追われた上に、逃げているところを天颶に捕らわれてしまい満身創痍となったかがりは、心のうちに突然響いた声に「力が欲しい」と答えます。

すると、膨大な閃光とともに一人の男・・・彭寿星本人が降臨し、天颶をあっという間に薙ぎ払ってしまいました!

とてつもなく強大な力を持つ彭寿星。
彼を式神として従えることになったかがりは、手探りながらも、本気で世界を変えるために動き始めます・・・!

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作者の小林湖底氏は最近の第11回GA文庫大賞でも《優秀賞》を受賞されている方ですね。
同時に多数の新人賞を獲る作家というと、『狂乱家族日記』の日日日氏を彷彿とさせて、これからの活躍が期待されます。
ひきこまり吸血姫の悶々 (GA文庫)
小林 湖底
SBクリエイティブ
2020-01-11


本作、表面的な世界観は、古代日本・中華風の東洋ファンタジーで統一されているのですが、かなり念の入った設定が下地に構築されている、不思議な作品になっています。

特に、近年の異世界転移・転生系ファンタジーの要素を、SF的な仕掛けで伝統的な東洋ファンタジーの世界に融合させることに成功している稀有な作品だと思うので、これからSF書こうとしている人には一読の価値アリです!

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ケモミミ作品としては、「狐耳がついていることで差別される」という状況を真正面から描いている点で、とても心を動かされた作品です。

近年の文庫オリジナルラノベは、「ケモミミの有る無しによる差」をガチで描いている作品がいくつか見受けられて、このあたりでWeb小説系との差別化を意図しているのかなと思う部分があります。

ケモミミの生えたモノとの残酷な差異を感じさせる小説としては、『救世主だった僕が三千年後の世界で土を掘る理由』もおススメ。





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