田舎の山里から大都会・大阪に出てきた化け狸のまめだ。
大勢の人間を化かして手玉にとる!・・・ことを夢見ていたはずが、文明の進歩に追いついていけず、散々な目にあってしまいます。

そんな折、化け狐の落語家・大黒亭文狐の噺に魅せられたまめだは、新時代の化かす術として「落語」を修得することを志しますが・・・。

『あいどるスマッシュ!』のTNSK氏が描く大正落語ファンタジー『うちの師匠はしっぽがない』の初単行本が9月6日より発売中です!

時は大正。

仲間内でも変わり者の化け狸の娘・まめだは、大阪の街で散々な目に遭った後、危ないところを助けてもらった化け狐の女流落語家・大黒亭文狐の噺に惚れて、半ば無理矢理弟子になりました。

しかし、文狐は全然落語を教えてくれる様子はなく、まめだがやることは毎日雑用や下働きばかり。
元が単純な狸なだけに、落語の修行をすっかり忘れて雑用の日々に勤しんでいた頃、まめだは文狐に連れられて寄席に行くことになります。

そこで、彼女は落語の新たな一面を見ることになるのですが・・・!

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異色のアイドル漫画だった『あいどるスマッシュ』とはうって変わって、本作は落語の世界について非常に丁寧に語っている作品です。
とはいえ、舞台設定が他の「大正時代」系作品と比べるとちょっと変わっていて面白い。

帝都・東京ではなく、通天閣が新時代のシンボルとなっていた頃の大阪を舞台にしているところや、自動車やバスが走り始めた時期の大正(昭和に変わる直前)の風景を描いているところなど、よくある「大正」のイメージとはちょっと違った雰囲気があります。

落語や狸以外にも、この時代背景に興味がある人にはおススメの作品です。

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狸娘まめだについて。
表紙絵や巻頭イラストでは狸耳&しっぽが付いていますが、作中では完全な人間型か、完全な狸型のどちらかの姿になっている場面がほとんどです。

過去にも何度か語っていますが、化け狐・化け狸物は『キツネノ木ノ葉』みたいに、獣耳作品として紹介したいけど化け獣キャラに獣耳が無いタイプの作品があるから悩ましいところ・・・。
獣耳がなくても、まめだはとってもキュートな狸娘ですが!

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気になった描写。
まめだと猫が対決している場面が時々描かれます。
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『うちの師匠はしっぽが無い』1巻P73(TNSK/講談社)

狸のライバルといえば狐、のイメージがあり、実際本作でも師匠の化け狐と弟子の化け狸という形で対になっていますが、伝承を紐解いていくとむしろ狸は猫とライバル関係だったようなんですよね。

平安時代から語られてきた化け狐に対して、化け狸・化け猫話の成立は江戸時代のほぼ同時期らしいですし、そもそも「たぬき」という言葉自体、猫の事を指していた時期もあったようで、狸と猫には浅からぬ関係があるようです。

そういう点で、本作のまめだと猫の関係は今後どう描かれるのか気になる所であります。

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そうそう、
化け狸が落語をする話としては『化けてます こだぬき、落語家修行中』もあるので、本作が気に入った人は、一緒に読んでみてはいかがでしょう。






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