サイボーグ技術や神経接続ネットワーク、知能を持つアンドロイドといった夢の技術が実用化されつつある一方で、非NBC兵器による限定戦争や自然破壊による災害、それによって引き起こされる貧困と混乱が拡大しつつある近未来。

そんな世界の混乱から離れた人工リゾート島≪セナンクル・アイランド≫を舞台に、夢は「世界平和」の全身サイボーグほんわか娘・七転福音(ナナコロビ・ネネ)と、天才科学者に創られた無愛想なネコミミアンドロイド・クラリオンの、未来の日常が描かれます!

新章に突入した『紅殻のパンドラ』、単行本9巻目が10月26日より発売中です!

巨大自律掘削装置「ブエル」の騒動も落ち着き、再びもとの日常に戻ったネネとクラリオン。

体育に関する学校の課題レポート作成の過程で、パラリンピックの超発展形「サイバスロン」の選手と接したり、セナンクル島を巡る遊覧飛行船の旅を楽しんだりと、ネネにとっては本当に充実した日々が過ぎていきます。

しかし、セナンクル島の水面下では、秘密結社「ポセイドン」の新たな陰謀が動き出しているのでした・・・・・!

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戦闘メインだった前巻から、ポストサイバーパンクな未来世界の日常が描かれる元の作風に戻った9巻。

特に「サイバスロン」まわりの話はSFとしてなかなか秀逸です。
義体技術の発達によりパラリンピック記録がオリンピック記録を超える事例は近年しばしば話題に上がっていて、アニメ『攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX』や海外のSF小説等でもネタにされているのですが、漫画としてしっかり描かれているのは本作が初めての例なのではないでしょうか?

戦闘が無いのに読んでいてワクワクさせられるのは、原案の士郎正宗氏と、企画構成の六道紳士氏の手による世界観の賜物なんでしょうね。

ちなみに、六道氏の体調不良につき、9巻から作画がすべて春夏秋冬鈴氏に変わっているのですが、8巻までと比較してもほぼ違和感無い素晴らしい作画で(以前の巻と並べて比較すると、全体的にキャラクターがやや丸っこくなったことに気づくくらいの差)、これからも期待できそうです。

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本作のケモミミ要素はもちろんネコミミアンドロイド・クラリオンなのですが、本作にはもうひとり、欠かせないケモミミさんがいます。
それは天才科学者サハルの元・部下「バニーさん」。

ゴミ捨て場のゴミからハッキング用のデバイスを即興で組み上げてしまうくらいには凄腕のエンジニアなのですが、天才・超天才・超電脳がひしめく本作では、イマイチ冴えない立場に置かれてしまっている彼女。
彼女もなんだかんだで本作のテーマである「世界平和」を奉じているところが、なかなか面白い位置づけになっています。

彼女のバニー耳で面白い表現だと思ったのが下のコマ。
「半信半疑」の台詞の吹き出しが描かれている側の右の耳が折れていて、「気に入った」の吹き出しが描かれている側の左の耳はピンと立っているんですね。
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『紅殻のパンドラ』9巻P62(春夏秋冬鈴・六道神士・士郎正宗/角川書店)








吹き出しとケモミミの動きが連動している、という例は他にもありそうなのですが、このシーンは場面自体の重要性もあり、かなり印象に残りました。



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