傑作獣耳小説『狼と香辛料』の新シリーズ!
賢狼ホロの娘・ミューリと、成長した聖職者見習いコルが新たな旅を始める、『新説 狼と香辛料 狼と羊皮紙』が9月10日より発売中です!

時代はホロとロレンスが結ばれてからおよそ十数年たった頃。
ロレンス夫婦が経営する湯屋「狼と香辛料亭」で長い間世話になっていた青年コルは、ついに本格的に聖職者になることを目指して、自らの旅を始める決心をします。
目的地は「狼と香辛料亭」のある温泉地ニョッヒラから南、ローム川沿いにある毛皮と琥珀貿易の中継都市レノス。

今、世界は、教会の課す「十分の一税」の是非を巡って、教皇庁と島国ウィンフィール王国が対立している真っただ中。
コルはウィンフィール王国の王子ハイランドの誘いを受けて、レノスの地で教会の不正を正す手伝いをするつもりでした。

本来、レノスまでは一人旅の予定。
しかし、なぜかホロとロレンスの娘、齢十そこそこの半狼の娘ミューリがコルの乗る渡し船の荷物・・・・・・樽の中から飛び出してきます!

ミューリが勝手についてきたのかと思えば、どうやら彼女がコルについていくのはホロ&ロレンス夫妻公認のようで、その時から、狼(ミューリ)と羊皮紙(聖職者希望のコル)の新しい旅の物語が始まるのでした・・・・・・!

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元々『狼と香辛料』は12~13世紀のドイツ&北欧のバルト海交易の時代をモチーフにしていたそうですが、本作『狼と羊皮紙』は少し時代が下って14~15世紀の宗教改革の時代をモチーフにしているようです。
イングランドを思わせる島国ウィンフィール王国とか、そこで起ころうとしている聖書翻訳や国教会設立の動きなんかはまさにそんな感じ。

それに絡めて、「聖職者は結婚しちゃダメなの?」といういかにもラブコメ的なネタを混ぜ込んでいるところは、ラノベの魂を忘れていない本シリーズならではといえそうですね。

教会対立テーマのラノベという点では、同作者のもう一つのケモミミ娘シリーズ『マグダラで眠れ』とも重なる部分があるのですが、『マグダラで眠れ』が八方塞がりの絶望的な状況から抜け出すために足掻き続ける重い話であるのに対して、『狼と羊皮紙』は希望と自由に満ち溢れた明るい雰囲気の作品になっています。
マグダラで眠れVII<マグダラで眠れ> (電撃文庫)
支倉 凍砂
KADOKAWA / アスキー・メディアワークス
2015-11-21


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作者の支倉凍砂氏があとがきで「どの頁を開いても可愛い生き物がいて穏やかな気持ちに」なれるような本を、と述べているように、夏の太陽のように元気いっぱいな狼娘ミューリが愛らしい作品です。

ホロと違って人間のロレンスの血を半分引いている関係で、狼耳や尻尾を簡単に引っ込めることができ、見た目には完全に人間の少女の姿になれる一方(だから表紙も四つ耳キャラとして描かれている)、ホロのように完全な狼の姿になるのは難しいという特徴を持っています。

雅さのあったホロと比べるとかなり幼い感じを残しているミューリですが、「狼と香辛料亭」で多くの旅人と接してきた関係でかなり世慣れており、聖職者になるべく俗世と微妙に一線を引いてきたコルよりも常識的な一面を持っていたりします。このあたりは、過去のホロとロレンスの役割とは逆になっているんですね。

ミューリがなるほどホロの娘だなあ、と感じさせられるのは、とにかく物を食べている描写が多いところ。ホロも食欲旺盛でしたが、ミューリも暇さえあれば食べる食べる!
魚よりも肉が好き、というところは、まさに狼の血なんでしょうねえ。